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22-10-2021

オランダ判例速報9/10月号 2021

勤務中の振る舞いに関して度々書面による警告を受けていた労働者が使用者の反対にも拘わらず渡航中止勧告の対象国に渡航したことを理由に行われた即時解雇は有効であるとされた事例

(リンブルク地方裁判所2021年4月1日決定1 )

   労働法によりますと、使用者は、原則として労働者の希望するように有給休暇を取得させなくてはなりません2。但し、使用者側にこれを拒否する重要な理由がある場合はこの限りではありません3。また、労働契約の各当事者は、他方当事者に緊急事由を伝えることにより、直ちに労働契約を解約することが可能です4。使用者側にとっての緊急事由とは、合理的見地からしてもはや使用者に労働契約の維持を期待することができないような労働者の振る舞いを意味します5

   本件におきましては、労働者は、勤務中の振る舞いに関して都度使用者から書面で警告を受けていました。その中で、労働者が、休暇のためオランダ政府が渡航中止勧告を出していた国(ポーランド)に渡航しようとしました。これに対して使用者は、オランダに帰国後10日間自己隔離をしなくてはならないこと、倉庫勤務という労働者の職務内容に鑑みると自宅勤務はできないことを理由に、有給休暇の取得にもはや同意できないとして、ポーランドに渡航した場合には即時解雇すると警告しました。そのような使用者の警告にも拘わらず労働者がポーランドに渡航したため、使用者は労働者を即時解雇しました。 

   裁判所は、労働者の職務は在宅勤務では対応できないという理由だけをもって使用者には渡航に同意しないことに重要な事業上の利益があるとした上で、これまでにも労働者に対して都度書面で警告が与えられていたことに鑑み、使用者には緊急事由が存在したとして、本件即時解雇は有効であると判示しました。 

   労働者の職務は在宅勤務ではできないという理由だけでもって、使用者には渡航に同意しない(=有給休暇の取得を拒否する)ことに重要な事業上の利益があると言い切った点で興味深い判決と思われます。

事実の概要

   2019年10月15日、労働者は、洗剤等を製造及び販売する使用者により12か月の有期労働契約によりフォークリフトの運転手として雇用された。その後、労働者及び使用者は、2021年3月13日まで契約期間を延長することに合意した。 

   2019年11月、労働者は、同僚と口論になり、その襟元を掴む等非常に攻撃的な振る舞いを行った。また、労働者は、夜間勤務中ラップフィルムで自らを簀巻きにし、ラップフィルを自らはがすことができるかテストした。使用者は、これらの労働者の振る舞いに対して、都度書面で警告を行った。労働者は、当該警告書を受領した証拠としてこれに署名した。  

   2020年1月、労働者は、以前に国際輸送に必要なラベルを誤った場所に貼っているとして同僚から注意されていたにも拘わらず、再度同じ過ちを犯した。使用者は、これに対して最後の警告を書面で行い、次回同じような誤りがあった場合には、配置転換を実施することを通知した。労働者は、当該警告書を受領した証拠としてこれに署名した。 

   2020年5月、労働者が勤務時間中携帯電話ばかり見ていること、コロナ対策中にも拘わらず休憩時間中同僚と十分な距離を取らなかったこと、及び同僚に対して卑猥な言葉を使ったことを理由に、使用者は再度書面で警告を行った。その中で使用者は、既に通知していたように労働者を配置転換すること、次回同じような誤りがあった場合には労働者を即時解雇することを通知した。 

   2020年5月6日、労働者は病気で働けないと使用者に通知した。 

   2020年7月、労働者は職場に完全復帰するとともに、倉庫部門に配置転換された。 

   2020年10月9日、労働者は、ポーランドに帰国することを理由に2020年12月4日を最終勤務日とすることを使用者に通知した。また、労働者は、UWVから失業手当を受けられるようにするため、労働契約が延長されない旨述べた書簡を作成するよう使用者に求めた。使用者はこれを拒否した。 

   2020年11月27日、労働者は、首が痛むとして早退したが、これを上司に通知しなかった。 

   2020年12月1日、使用者は、通訳同席の上で労働者と面談を行った。その中で労働者は、12月5日及び6日の週末にポーランドに渡航すると使用者に伝えた。これに対して使用者は、コロナが流行していること、帰国後に自己隔離しなくてはならないことを理由に、もはや有給休暇の取得に同意できないと伝えた。また、労働者が病気で働くことができないことに鑑み、渡航しても健康に問題ないか産業医の判断を仰がなくてはならないと伝えた。

   2020年12月1日、労働者は、健康状態が回復したこと、休暇後に職場に復帰することを使用者にWhatsAppで伝えた。

   2020年12月3日、使用者は、労働者に対して電子メールを送信し2020年12月1日に行われた面談の内容を確認するとともに、これまでに度々書面で警告を行ってきた経緯に鑑み、労働者がポーランドに渡航した場合には即時に解雇することを伝えた。 

   2020年12月3日、産業医は、労働者に電子メールを送信し、12月7日に面談に来るよう伝えた。 

   2020年12月7日、労働者は、使用者に対して、現在ポーランドにいる旨伝えた。同日、使用者は労働者を即時解雇した。 

   労働者は、公平補償(billijke vergoeding)及び移行補償(transitievergoeding)の支払いを求めて訴えを提起した。また、労働者は、予備的に2020年12月8日から労働契約が正当に終了するまでの期間について賃金を支払うよう求めた。

<判旨> 

4.2. (…)当裁判所は、使用者が行った即時解雇を維持する。その理由は以下の通りである。 

4.3. 本件では、使用者が許しがたいと考える労働者の振る舞いに対して、使用者は都度書面で労働者に対して警告を行ってきた。この点、労働者は、そのような振る舞いを行っていないと主張する。しかし、そのような労働者の主張は信ぴょう性に欠ける。また、労働者はオランダ語が得意でないので警告書を読むことができないとも主張する。しかし、これは労働者において警告書の内容を理解することの妨げとはならない。実際、労働者は、口頭審理の場で、労働者はWhatsAppのメッセージをオランダ語で送信することが明らかにされた。さらに、使用者は、ポーランド語を話すことができる同僚の助けにより、労働者に対して警告書の内容を口頭で説明している。(…)また、労働者は各警告書に署名をしているが、なぜ警告書の内容を理解していないにも拘わらず署名したのか、その理由を説明していない。 

        また、3度目の書面による警告後、労働者は、制裁として配置転換処分を受けている。しかし、労働者が当該処分に反対したことはなく、また当該処分の理由を使用者に問い質すようなこともしていない。この点、労働者は、問題となる配置転換は職場復帰の取り組みの一環として行われたに過ぎないと主張するが、そのような主張を裏付ける証拠は何もない。むしろ、労働者のそのような主張は、労働者が警告書の内容を理解していたことを裏付けるものである。 

4.4  使用者が各警告書の中で労働者に対して行ってきた非難の程度は様々である。しかし、こうした使用者による労働者への警告が2019年11月から2020年5月までの期間に次から次へと行われていること、全ての問題となる振る舞いが短期間中に行われたことに鑑みると、2020年5月以降労働者はもはや過ちを犯すことはできなかった(にも拘わらず再度過ちを犯した)という使用者の主張を、当裁判所は支持せざるをえない。また、使用者は、労働者にこの点を明確に伝えていた。  

4.5   労働者の責められるべき数々の振る舞いのうち、最後の振る舞いについて、当裁判所は以下のように判断する。労働者が2020年12月に休暇を取ることに使用者が当初同意していたことに関して、当事者間で争いはない。しかし、使用者は、労働者がポーランドに渡航することを理由に、この休暇への同意を撤回した。その理由は、そのようなポーランドへの渡航が労働者の職場復帰取り組み義務にそぐわないということと、ポーランド及びオランダの両国でコロナに関する規制が行われていることから、ポーランドからの帰国後に10日間の自己隔離を行わなければならないということであった。この理由は、2020年12月1日に労働者に伝えられた。当裁判所の見方では、使用者の対応は、実質的にはポーランドへの渡航禁止であり、休暇への同意の撤回ではない。(…)この点、当時コロナの影響でポーランドにコード・オレンジが発令されていたため、ポーランドから帰国後10日間自己隔離をしなければならなかったことに関して、当事者間で争いはない。しかし、労働者の職務は、在宅勤務では対応できないものであった。この理由だけでもってして、使用者にはポーランドへの渡航を許可しないことに重大な事業上の利益があったということができる。従って、労働者の病状という観点から使用者において労働者によるポーランドへの渡航を許可しないことができたか否かはもはや問題とならない。(…)これまでの労働者の非難されるべき振る舞いに鑑みると、労働者においてもはやこれ以上過ちを犯す余地はなく、ゆえに2020年12月8日に行われた即時解雇は有効である。使用者は、労働契約を直ちに解除しなければならない緊急事由があった。 

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1 ECLI:NL:RBLIM:2021:3110.

2 Art. 7:638 lid 1 BW.

3 Idem.

4 Art. 7:677 lid 1 BW.

5 Art. 7:678 lid 1 BW.

主要な連絡先

岡野・ハイマンス 謙次

弁護士(オランダ王国)
Send me an e-mail
+31 70 318 4813

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