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20-05-2019

登記法改正案|最終受益者に関する登記について


要約
(1) EU指令2018/843を国内法化するため、商業登記法等を改正するための法案がオランダ国会で審議されています。本改正により、オランダ国内で設立された企業等に最終受益者に関する情報を登記する義務が課される予定です。前述国内法化期日は、2020年1月10日です。
(2) オランダ国内で設立された企業等で、本改正が実施される時点から遡って5年以内にオランダ国内から撤退し且つ商業登記から抹消されたものも、再度登記を行い且つ最終受益者に関する情報を登記する義務を負います。
(3) 登記された最終受益者に関する情報の一部(氏名、出生年、出生月、居住国及び国籍)が公共の閲覧に供される可能性があります。但し、最終受益者において、その情報を非公開とするよう商業登記所に請求することが可能です。
(4) 登記義務に違反した場合、最大で€ 20.750の過料が課せられる可能性があります。
(5) オランダ国内において最終受益者に関する登記義務の有無があるか否か確認することがお奨めされます。

1.法的枠組み


EU指令2018/843(資金洗浄及びテロリストを金銭的に支援する目的で金融制度を利用することを防止するためのEU指令2015/849を改正するためのもの)をオランダ国内法化するため、2007年商業登記法(以下「Hrw」又は「オランダ商業登記法」といいます)及び資金洗浄及びテロリスト財務支援防止法(以下「Wwft」といいます。)が改正される予定です1。本改正により、オランダ国内で設立された企業及びその他の法人に、最終受益者に関する情報を登記する義務が課される予定です

2.最終受益者の定義


最終受益者とは、企業又はその他の法的組織体の最終的な所有者又はその支配権を有するものをいいます3。また、法人の場合、次の自然人を意味します4:
• 直接的又は間接的に25%を越える法人の持分を保有する者;
• 法人の定款変更に係る決議に関して、直接的又は間接的に25%を超える議決権を行使することができる者;又は
• 事実上、法人の支配権を行使することができる者。

3.最終受益者の登記義務を負う者


原則として、商業登記法第5条及び第6条に従って商業登記に登記される企業又はその他の法人は、最終受益者に関する情報を登記する義務を負います5。例外として、株式を上場しているB.V.及び

N.V.並びにその100%子会社6、宗教団体、マンション管理組合、その他自営業者は、当該登録義務を負いません7。また、立法趣旨説明書によりますと、外国法人のオランダ国内拠点(すなわち駐在員事務所又は支店)も、当該義務を負いません8。 以上により、日系企業の子会社であるB.V.及びN.V.は、最終受益者の登記義務を負う可能性が高いといえます。しかし、オランダ国内の駐在員事務所又は支店を有する日本法人は、当該義務を負う可能性は低いといえます。なお、立法趣旨説明書によりますと、オランダ国内で設立された企業又はその他の法人で、本改正が実施される時点から遡って5年以内にオランダ国内から撤退し且つ商業登記から抹消されたものも、再度登記を行い且つ最終受益者に関する情報を登記する義務を負います9。

4.登記すべき情報


商業登記に登記すべき最終受益者の情報は次の通りです10。
a. 市民サービス番号(もし最終受益者にこれが付与されているならば);
b. 最終受益者が居住を有する国(オランダ以外)の税務番号(もし当該国により最終受益者にこれが付与されているならば);
c. 氏名、出生年、出生月、居住国及び国籍;
d. 出生日、出生地、出生国、住所;
e. 最終受益者が有する経済的利益及びその金銭的範囲。

5.提出すべき書面


上記の4のa、b、c及びdに係る情報を確認することができる書面の写しの提出が求められます11。


6.最終受益者に関する情報へのアクセス


上記5に列挙した情報は、a、b及びdを除き、誰でもこれを閲覧することが可能です12。また、金融情報担当当局等は、上記5のa、b及びdに係る情報を閲覧することができます13。しかし、Wwft上金融担当当局の監督下にある者(銀行、その他金融機関)及び同法上金融担当当局に不審な取引を報告する義務を負う者(銀行、金融機関、弁護士、公証人、不動産業者、自動車販売者等)は、上記5のa、b及びdに係る情報を閲覧することはできません14。また、記者、調査員及びその他社会的組織も、上記5のa、b及びdに係る情報を閲覧することはできません15。さらに、最終受益者は、もし次の事由のいずれか1つが該当するならば、商業登記所に、最終受益者に関する情報を非公開とすよう請求することが可能です16:
i) 不釣合いなリスクに晒されること;
ii) 詐欺、誘拐、暴力、脅迫等のリスク;
iii) 未成年であること;
iv) その他の行為能力制限事由。
 


7.罰則


財務大臣は、義務の履行を促すため、強制罰として過料を課すことが可能です17。また、義務違反に対して過料を課すことも可能です18。義務違反に対して課すことができる過料の金額は、最大で€ 20.750までとなります19。


8.国内法化の期日


EU指令2018/843によりますと、加盟国は、2020年1月10日までに同指令の内容を国内法化する義務を負います20。


9.法案の状況


現在オランダ下院にて法案が審議中です。


10.移行処置


既に商業登記に登記されている企業又は法人は、改正法の施行後18ヶ月以内に必要情報を登記する義務を負います21。


以上。


1 Memorie van Toelichting, p. 1.
2 Idem.
3 Art. 10a lid 1 Wwft (nieuw). Zie ook art. 3 lid 6 van de Richtlijn (EU) 2018/843.
4 Art. 3 lid 1 onder 1 Uitvoeringsbesluit Wwft 2018.

5 Art. 15a lid 1 Hrw (nieuw).
6 Art. 10a lid 2 onder a Wwft (nieuw). Zie ook Memorie van Toelichting, p. 12.
7 Art. 15a lid 1 Hrw (nieuw).
8 Memorie van Toelichting, p. 12.
9 Idem, p. 14.
10 Art. 15a lid 2 Hrw (nieuw).
11 Art. 15a lid 3 Hrw (nieuw)
12 Art. 21 lid 1 Hrw、zie ook art. 30 lid 5 van de Richtlijn 2018/843.
13 Art. 28 lid 2 Hrw. (nieuw)
14 Memorie van Toelichting, p. 16.
15 Idem.
16 Idem, p. 18.

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